導入事例

レイアウトや拡張子を改変せず
スムーズなファイルの無害化が可能に

日常的に行う資料の印刷にかかる時間を1/3に短縮

長野県中野市は、LGWAN利用端末とインターネット利用端末を仮想化し、『自治体情報システム強靱性向上モデル』に準拠したネットワーク分離を行ってきました。2022年度のシステム更新に伴い、インターネット接続系のシンクライアントシステムを、海外製品から「SKYDIV Desktop Client」に入れ替え。この整備の背景について、中野市 総務部 企画財政課 DX推進係 主任主事の金井 友也様にお話を伺いました。

総務部 企画財政課
DX推進係
金井 友也 主任主事
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職員1人1台のインターネット端末を仮想デスクトップで提供

当市では、企業や自治体でPCやUSBデバイスの盗難・紛失の報道が相次いでいたことを受けて、PCの盗難対策などの情報セキュリティ対策強化のために、総務省の地域情報化アドバイザー派遣制度を利用することにしました。そこで、シンクライアントを採用すれば盗難対策になるだけでなく、物理PCが長く使えるため結果的にリプレース頻度が減らせるとの話から、LGWAN接続系のPCを仮想化。さらにコストを抑えて仮想化を実現する方法について助言を受け、Microsoftが提供する仮想化基盤のHyper-Vを使って仮想環境を構築しています。また、主に業務で使用するLGWAN利用端末は1人ずつ独立した環境を提供したいという当市の考えと、リソース共有型のSBC方式では端末のメンテナンスで利用している「SKYSEA Client View」の「リモート操作」機能が使えなくなるという背景から、VDI方式を採用しながらも、各クライアントOSにサーバーOS(Windows Server)を利用することで、予算を抑えつつ要件に沿った環境を構築しました。

2016年、総務省の「自治体情報システム強靱性向上モデル」に基づいて、インターネット接続系もネットワーク分離が必要になりました。職員一人ひとりに対して1台ずつインターネット接続用の物理端末を支給するのが理想ですが、限られた業務スペースやコストを考えると現実的ではなく、SBC方式の仮想環境を整備することに。製品を検討する時間的余裕があまりなかったことから、長野県内の自治体業務の電子化を推進している長野県市町村自治振興組合による共同利用に参加する形で、海外製のシンクライアントシステムを導入しました。

結果的に1人1台のインターネット環境を整えられたことは良かったのですが、一方で職員からは「Webブラウザしか利用しないのに、仮想デスクトップを経由するのは手間」「仮想環境へのログインに時間がかかる」「印刷がうまくできない」などの声があり、これらは課題でした。そこで、インターネット接続系の仮想環境を構築している長野県自治体情報セキュリティクラウドの更新時期に合わせて、シンクライアントシステムの入れ替えを検討することになります。

仮想デスクトップを経由せず、Webブラウザを素早く立ち上げ

今回のシステムの検討は時間に余裕を持ってスタートしたので、複数の製品を比較できました。当初は業務効率化とコスト削減を見込んで仮想ブラウザ製品の検証を進めていました。しかし、同時期に「SKYDIV Desktop Client」の提案を受け、検証環境を構築。「SKYDIV Desktop Client」は、アプリケーションのみを公開できるので、デスクトップ環境が不要な職員はWebブラウザのみを利用することが可能です。必要に応じて利用する環境を使い分けられるため、仮想ブラウザ製品よりも使い勝手が良いと感じました。検証結果を踏まえて長野県市町村自治振興組合に相談したところ、共同調達を検討してもらえることになり、2022年7月に「SKYDIV Desktop Client」を導入しました。

庁舎内のシステムを入れ替える際には、事前に職員に周知を行い、移行手順をマニュアル化していますが、あまり目を通してもらえないのが実情です。そこで今回は、Sky株式会社のインストラクターに講習を依頼し、「SKYDIV Desktop Client」の使い方を職員にレクチャーする機会を設けました。用意できた移行期間はわずか10日間という短い日数でしたが、そのなかでもスムーズに移行でき、私どもに問い合わせが入ることはほとんどありませんでした。

仮想環境へのログインからファイルの無害化、印刷までの時間を短縮

当市では、Webサイトからダウンロードしたファイルやメールの添付ファイルなどの印刷に、「SKYDIV Desktop Client」の「ファイル無害化連携」オプションを活用しています。以前使用していたシンクライアントシステムでは、当市の環境と相性が悪く、仮想環境から直接プリンターに出力する機能が使用できませんでした。そのためファイルをインターネット接続系からLGWAN接続系に移動するソリューションが必要でしたが、無害化ソリューションは高価な製品や海外製品が多く、使用認可を取得できない可能性があったことから、長野県自治体情報セキュリティクラウドのファイル交換サービスオプションを利用することにしました。しかし、ファイルの拡張子やレイアウトが改変されたり、無害化できないファイルがあるなど、原本取得機能を使った受け渡しがたびたび発生している状況でした。

「SKYDIV Desktop Client」の「ファイル無害化連携」オプションは、拡張子が変わったり、レイアウトが崩れたりすることなく、原本の状態をほぼ維持したまま簡単な操作で無害化できます。仮想環境から直接印刷する機能も使用できるようになり、インターネット利用端末からLGWAN利用端末へのファイルの受け渡しや、印刷にかかる時間が大幅に削減され、業務効率化が実現できました。

情報担当者としては、職員がなるべくネットワークが分離されていることを意識せずに業務に集中できる環境を整えたいと考えています。ネットワーク分離以降、職員の業務環境はかなり不便な状態でしたが、「SKYDIV Desktop Client」の導入によって基幹系と情報系の2系統だった頃に近い感覚で業務を行えるようになったのではないかと思っています。特に自治体では紙資料の回覧が多いので、印刷にかかる時間の短縮は大きなメリットでした。実際に職員からも「インターネット利用端末で閲覧したファイルの無害化から印刷までに、以前は15分ほどかかっていたが、5分程度で完了できる」という声が上がっています。

【図1】

設定項目がActive Directoryの制限などと競合せず、使い分け可能

当市では、Active Directoryのグループポリシーで職員の端末のセキュリティ設定を行っています。「SKYDIV Desktop Client」には、シンクライアントを運用する上で必要な項目が用意されているので、基本的な制限は「SKYDIV Desktop Client」で行っています。設定項目を使い分けていてもグループポリシーが優先され、設定が競合することがないため、管理がしやすく助かっています。

また、管理コンソールの「システム構成」画面ではサーバーの稼働状況を視覚的に確認できます。障害発生時などはアラートも表示されるため、システムのどの部分に問題が生じているのか、状況を素早く把握することが可能です。また、以前は海外製品を使用していたため、問い合わせの対応は基本的に英語でした。「SKYDIV Desktop Client」は国内メーカーの商品なので、サポートも日本語で行ってもらえることはもちろん、保守契約ユーザー用Webサイトの情報が充実していることも、スムーズな運用に役立っています。

【図2】

職員と管理者の双方の業務効率化で、費用対効果が向上

「SKYDIV Desktop Client」の導入によって、仮想環境へのログインからファイルの無害化をはじめとする日々の業務効率を大幅に向上できました。原本取得機能を使用することもなくなったので、セキュリティ面においても安心感が増しています。また、機能がシンプルで、インタフェースも「SKYSEA Client View」に似ているため操作しやすく、サポートがすべて日本語対応になったことで、管理やメンテナンスの業務負荷も下がりました。以前使用していた海外製品と比較して大きくコストダウンしたわけではありませんが、ユーザー側と管理者側の双方で業務効率化がかなったことを考えると、費用対効果は非常に上がったと考えています。

現在「SKYDIV Desktop Client」を使用しているのはインターネット利用端末のみで、LGWAN利用端末はHyper-Vで仮想化を行っており、コストは抑えられているものの高い管理負荷がかかっている状況です。費用面の折り合いがつけば、LGWAN接続系への「SKYDIV Desktop Client」の導入を選択肢に入れてもよいのではないかと思えるくらい、今回の導入でメリットを感じました。シンクライアントシステムを利用することによって障害の未然防止やスムーズな障害対応が可能になれば、さらに快適な業務環境が確保でき、管理者だけでなく、ひいては職員の業務効率化にもつながると考えています。

長野県中野市
中野市は長野県の北部に位置し、東は志賀高原、西に北信五岳、中央には千曲川と、豊かな自然に囲まれた人口約41,000人の小都市です。生産量日本一のエノキタケをはじめ、りんご、ぶどう、桃など、農業が盛んです。また、彫刻家や染織家が工房を構え、ものづくりの文化が根づいているほか、現在は音楽を中心としたまちづくりも進めています。
(2022年7月取材 / 2022年9月掲載)
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