導入事例

ネットワーク分離環境での不便さを解消し
教職員の校務に掛かる負担を軽減

複雑な情報化社会の中で、子どもたちの情報を守るためのICT環境

島根県松江市は、平成24年3月に学校ネットワークの校務系と校務外部接続系を分離し、校務外部接続系コンピュータを各校4~7台整備。しかし、数台を全教職員で共用するため利便性の低下は否めない状況でした。平成30年度、この課題の解決のためシンクライアントシステム「SKYDIV Desktop Client」を導入されました。今回の整備の背景について、松江市教育委員会 学校教育課 三賀森 卓司 課長と須山 誠司 主幹にお話を伺いました。

松江市教育委員会 学校教育課 三賀森 卓司 課長と須山 誠司 主幹松江市教育委員会
学校教育課
三賀森 卓司 課長
松江市教育委員会 学校教育課 三賀森 卓司 課長  学校教育課 須山 誠司 主幹松江市教育委員会
学校教育課
須山 誠司 主幹
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最も大事なことは、子どもたちを守り育てること

平成24年3月に、校務系と校務外部接続系のネットワークを分離

平成29年10月に公表された『教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン』では、ガイドライン制定の背景の一つとして「学校が保有する機微情報に対する不正アクセス事案も発生している」ことが挙げられています※1

特に多忙な学期末は、勤務時間内に校務を終えられず、やむを得ず自宅にデータを持ち帰ってしまい、その途中でUSBメモリを紛失してしまったといった報道を見聞きすることも増えます。

学校にとって最も大事なことは、子どもたちを守り育てていくことです。しかし、現代の情報化社会は複雑さを増しており、無責任な情報が飛び交い、匿名性を利用して良からぬことをたくらむ人も少なからずいるのが現実です。こうした環境の中で、子どもたちを預かる立場にある私どもにとって、子どもたちの情報を守るための対策を講じることは、重大な責務だと感じています。これまでも、こうした観点から情報管理上のリスクに対し、松江市として何ができるのかを考え、さまざまな取り組みを行ってまいりました。

平成24年3月には、校務系のネットワークとインターネットを通じて外部と接続できるネットワーク、学習系のネットワークを分離しました。この分離によって、教職員が使用する校務系コンピュータではインターネットが利用できなくなるため、各校の規模に応じて4~7台の校務外部接続系コンピュータを整備しました。

当初は、校務系と校務外部接続系のコンピュータ間のデータやりとりに、USBメモリを使用していたのですが、平成29年度に実施した校務支援システムの整備に合わせて、ファイル受け渡しシステムを導入。セキュリティチェックを行った上で、各自の校務系コンピュータにファイルを移せるようにしました。加えて、Webメールシステムも導入するなど、USBメモリを使用しなくてもいい環境を整えてきました。

ネットワーク分離による不便さの解消にシンクライアントシステムを選択

しかし、数十人の教職員で数台の校務外部接続系コンピュータを共用するため、利便性の低下は否めません。折々に「自席で郵便番号一つ調べることもできない。何とかなりませんか」といった強い要望が寄せられていました。平成30年度の校務用コンピュータ約1,200台を入れ替える整備の際、いくつかのベンダーから不便さを解消するための提案をしてもらいました。しかし、教職員1人に校務系と校務外部接続系のコンピュータを整備すると、単に2台分の費用が必要になるだけではなく、ネットワーク機器の追加や電源の確保、さらに周辺機器も調達しなければならず、多大な予算が必要になります。

そんななか、本市が学校ネットワークの管理を委託しているベンダーに紹介されたのが、Sky株式会社のシンクライアントシステム「SKYDIV Desktop Client」でした。本市は、ネットワーク分離が完了していたこともあり、このシステムであれば新たにサーバとシステムを導入するだけで済みます。また、本市が実際に取り組めるのかは今後の検討になりますが、将来的にテレワークにも対応できる仕組みであること。さらに、学習活動ソフトウェアや情報セキュリティ分野で評価が高い国内メーカーのシステムだということも評価して採用を決めました。

「SKYDIV Desktop Client」の導入によって実現したシンクライアント環境は、データセンターに設置したサーバにリモート接続することで、仮想的に校務外部接続系コンピュータが利用できる仕組みです【図1】。教職員の使用感としては、自分のコンピュータで校務系と校務外部接続系を切り替えて使うような感覚になります。

導入にあたっては、本市がどのような運用を目指すのかをお伝えし、学校ネットワークベンダーとSky株式会社で情報共有しながら進めてもらえたので、教育委員会側の負担はあまりありませんでした。私たちはその分、新しいシステムの導入が教職員の不安感につながらないように細心の注意を払うことに注力しました。

【図1】

教職員がスムーズに新しいシステムに慣れていけるような配慮

校長会で「SKYDIV Desktop Client」の導入を報告すると、「待ってました」と期待する声が多くを占めました。それだけ以前の環境に不便さを感じていたのだと思います。

 「SKYDIV Desktop Client」を起動し、IDとパスワードを入力すれば校務外部接続系コンピュータが使用できる9月から11月中旬に掛けて順次導入していくなかで、早い時期に導入した学校からは、早々に研修を行ってほしいという声も挙がりました。「SKYDIV Desktop Client」の基本操作は、アイコンをクリックして起動し、IDとパスワードを入力するだけのシンプルなものですので、起動の手順をまとめた簡単な資料を用意しておき、実運用に関する質問や要望のヒアリングは、全校への導入が完了してから行うことにしていました。

教員は常にコンピュータを使っているわけではないので、新しいシステムの導入には多少なりとも抵抗感がありますし、慣れるのにも時間が掛かります。そうした学校の事情を考慮すると、教職員の不安を解消できるよう、研修は早いうちに設けた方が良かったのかもしれないと、反省しているところです。

そうしたことを踏まえて、教育委員会としては、導入を進めていくなかで学校から寄せられた質問とその回答を一つの資料にまとめて学校に展開しましたので、全校に配備が終わったのちに行った説明会では、システムに関する質問はありませんでした。

一つひとつ、より良い環境に近づく手応えを感じています

来年度以降は、以前から検討していた光回線の整備を進めることに

また、別の課題も顕在化しました。本市では、各学校とデータセンターをVPN接続しています。これは「SKYDIV Desktop Client」の問題ではないのですが、現時点ではサーバとの通信にかかる負荷を、少しでも押さえた方がより安定した運用ができると考え、仮想の校務外部接続系コンピュータからは印刷が実行できないように制限を掛けています。

この制限を設けたため、印刷を行うときはいったん各自の校務系コンピュータにデータを移してから実行しなければならず、一手間余分に掛かってしまいます。この点については改善の要望が多いのは確かです。こうした経験から、インフラ面の強化も重要になるということがわかりました。本市が現在使用しているネットワークの回線は細いため、来年度以降に光回線に更新する整備計画を策定しました。以前から回線の増強は検討していたのですが、今回の「SKYDIV Desktop Client」の導入によって必要性が明確になったことで、かえって予算化が具体的に進められるようになったと前向きにとらえています。

11月中旬に全校導入が完了し、今(取材時)はまだ3学期が始まったばかりですので、これから運用を続けるなかで、新たな疑問や要望が出てくると思いますので、丁寧に対応していきたいと考えています。

一つひとつ前に進んでいることで、きっとより良い環境になっていくという手応えを感じています。「SKYDIV Desktop Client」も発売から日が浅いシステムではありますが、それだけに要望を丁寧にくみ取りながら迅速に対応してもらえていますし、今後もより使いやすくなるよう機能追加されていくと聞いていますので、その点にも期待したいと思います。

より良いICT環境をつくることで、教職員の「働き方改革」につなげたい

こうした一連の取り組みには、確かにさまざまな作業が伴いますし、手間も時間も掛かります。しかし、冒頭に申し上げたとおり、情報化社会の中で子どもたちの大切な情報を守ることは、私どもの重大な責務だと考えています。そのことを、学校の教職員の皆さんにもご理解いただき、教育委員会としても最大限に支援を行い、システム的な部分でも改善を加えてもらいながら、より安心で便利なICT環境を作り上げていきたいと考えています。そして、この取り組みは情報セキュリティだけではなく、テレワークなどの「働き方改革」につながる側面もありますので、今回の整備を初めの一歩として、さらに教職員の負担軽減へとつなげていきたいと思っています。

教 職 員 の 声

思い立ったタイミングですぐに使える環境が必要

松江市立第一中学校 園山 信夫 先生
松江市立第一中学校 園山 信夫 先生

本校では、学年ごとに校務外部接続系コンピュータがあり、1台を10~15名で共用していました。しかし、教員がコンピュータを使う時間はお昼休みや放課後に集中します。どうしてもタイミングを計ったり遠慮し合ったりしながら利用するため、すぐに使えないということが多々ありました。「SKYDIV Desktop Client」が導入されてからは、自分のコンピュータでログインしておけば、スムーズに切り替えながら使えます。ほんの小さな違いかもしれませんが、忙しい教員が限られた時間で活用するには「思い立ったときにすぐ使える」ということが何よりも大事です。また、操作もわかりやすく、一度手順を覚えてしまえば、戸惑うことなく活用できる簡単さも好評です。

松江市立第一中学校 勝部 千恵 事務主任
松江市立第一中学校 勝部 千恵 事務主任時間が掛かる業務も集中して行えるように

学校事務では、支払いや給与の処理、備品の発注、学校便りの作成、出張に伴う地図データの検索など、インターネットを利用する場面が多いのですが、以前は1台の校務外部接続系コンピュータを2名の事務職員で共用するという環境でした。お互いに譲り合いながら使用するため、例えば保護者アンケートの作成など時間が掛かる作業であっても、長時間占有するわけにはいきませんでした。「SKYDIV Desktop Client」が導入され、必要なときには集中して使えるようになったことで、保護者アンケートをWebで回答いただく方法に変更しました。リアルタイムに集計できる上、ほかの教職員とも回答状況が共有できるようになりました。また、保護者の方からも回答しやすかったというお声もいただきました。

(2019年1月取材 / 2019年3月掲載)
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